部屋と白いTシャツと私。

とにかく僕は不器用なのだ。

トマトソースをつくっても、トマトがとんでもないところに飛ぶ。
網ざるテクニックも意味がないほどかき混ぜる瞬間に飛び散る。
なぜかき混ぜただけで、トマトソースは人間一人飛び越えて背後の壁に付着しているのだろう。トマトソースのK点超え。

煮ている最中のトマトソースの飛び散りを防ぐ方法は、このnoteを参照したい。

おそらく僕がグレムリン2のクランプタワー従業員ならば「コンピューターに入力すればするほど給料が出る」仕組みらしいので、まったく給料がもらえないだろう。いや、もしかしたらグレムリン2じゃなかったかもしれない。
それほどに誤タイプも激しい不器用なのだ。いやBack spaceで消した分まで入れればもしかしたら高給取りも夢ではない。

さらに食器棚に入ってるお皿は全て絶妙な場所がかけてる。毎回使うたびにぶつけているようだ。

この前も冷蔵庫のドアを閉めただけなのに、チルドルーム的な蓋が割れた。修理をお願いしたら、メーカーが勘違いして野菜室のケースを持ってくるぐらい他の人が壊さないような絶妙な場所だったようだ。

ところでいきなり話は変わるが、6月は衣替えの時期だ。

僕は不器用な癖して、さらにめんどくさがりなのでクローゼットの中身を入れ替えた夏服を洗い直さずそのまま着ている。

だって去年しまう前に洗ったし...と言い聞かせるも、やっぱり気になるので6月1〜2周目で全バリエーションすべて袖に手を通すようにしている。

そうなると厄介なのが唯一存在する一枚の白いTシャツ。ほとんど黒い服しか着ないファッションセンスゼロな僕が唯一持っている白いTシャツ。

書いたとおり、僕はとにかく不器用なのだ。

この前もマヨネーズを使っていたら、なぜか肘に醤油がついていたことがあった。どうしたらマヨネーズ使っているのに、醤油が肘につくんだ。
ちなみにマヨネーズはサラダに。醤油は刺身に使った。決して、マヨネーズと醤油だけを食べる食生活ではないので注意いただきたい。

そう、白いTシャツは僕にとって恐怖であり脅威的な存在。

白い服を汚すと厄介なのは全人類共通の認識だ。なんとしても避けなければならない。
だが、イキって白Tなんて買ってしまうもんだから一度手を通さないと行けない。

そうなると、その日一日「白いTシャツを汚してはいけない24時」が始まる。

通勤電車は、ドアや壁にうっかりくっつけてしまう何がくっつくかわからないが、あまり距離をとっても他の乗客に迷惑になるから数センチ体を離す。揺れと同時にドアを凝視する。完全に変人。

だから、なるべく「今日は家から一切家から出ない」と決意した日に着るようにしている。ならTシャツ買うなよ。

まずは椅子に座る。背筋はきちんと伸ばし背もたれからは数センチ離して、姿勢良く。

その日一日の飲み物は、無色透明無味の水飲むしかない。お茶、コーヒーなんて敵だ。生きていける水分に絞るしかない。

ごはんは最悪だ。

飛ばない、はねない、こぼれないものを食べなければならない。

家から出ない方針なので自炊をしなければならないが、炒めものは絶対に避けなければならない。
白いTシャツに焼肉のタレなんかついた日には一生焼き肉ごと恨むだろう。
これから恨みながら焼き肉を食べる人生はつらすぎる。

では、麺類はどうだろうか。麺を茹でるお湯は透明だし、お蕎麦はいけるんじゃないだろうか。
いや、日本人として生まれてしまった以上きっとすする。そしてちゅるちゅるとやれば最後。きっとめんつゆがみぞおちあたりに飛び散る。

カップラーメンはお湯を注ぐ最後のきっかけで、飛び跳ねる危険がある。一生お湯を注ぐことを止められない状態になってしまう。

そうだ、デリバリーにしよう。

片手で食べられるマクドナルドなんかが良い。

しかし人生で3度ほどビッグマックをしっかりホールドした状態で口に運んだが、真ん中からバーンと崩壊したことがある。ジェンガ状態。
ビッグマックすらまともに持てない人間だ。きっと汚す。
もしかしたらアイスコーヒーぶっ刺すときにコーヒーの汁が飛ぶかもしれない。
なんといっても、タピオカ屋で、店員さんが「ストロー刺しますね。」と勢い良くストロー刺してもらったがなぜかミルクティーを胸元で被弾するほど不器用なのだ。いや、これは僕悪くないぞ。

そんなことを考えながら30分。

最終的にたどり着いた、結果は「何も載せない食パン」

ただ、パンくずの被害が床一面に広がった。なにせ上半身をだいぶ傾けながら食べたからだ。

そんな苦戦をしながら僕は今年もまた無事白いTシャツを着るミッションをこなし、洗濯機にいれるのだった。

翌日洗濯も終わり、満足しながら勝者の余裕で干している。

手にはミッションを終え、洗い終わった白いTシャツ。

背後のテーブルには、先程お昼ご飯として食べ終わったばかりのおつゆたっぷりのお蕎麦の器。

部屋は7畳弱。

振り向き背後のテレビに目を映す。白いTシャツを盛大にパンパンとシワを伸ばす。

触れる白いシャツとテーブル。

空中を舞うお箸、飛び散る汁。




そうだ、僕は不器用なだけではなく、忘れやすくてだらしないんだった。





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